概要

11月14日から16日の3日間のスケジュールで「Xen Summit Fall 2007」がSanta ClaraのSun Microsystems社の会場で開催された。VA Linuxとしては4会目の参加となる今回は、私を含め二人の技術者が参加した。会場は、普段はSun Microsystems社がセミナー等を開催するのに使われていると思われる、300人は優に収容できるで大きな会場であった。大ホールと会議室があったが、大ホールにてプレゼンテーションが行われ、会議室は、打ち合わせや話し合いの為に自由に解放されていた。参加者は200人を超える盛況振りであった。

発表形式が過去のサミットの運営とは異なり、1トラックの発表となっていた。更にテーマ毎のセッションに別れ、各社から選ばれたチェアが司会進行を行う。これもベンダーニュートラルを演出するためであろう。セッション内では15分から30分のプレゼンテーションがいくつか行われた。

1日目

  • Session 1: Introductory Comments and Xen Status/Roadmaps
    • Ian Pratt:Project status and organization

      今年の夏、VA Linuxが主催した「Xen Conference Japan 2007」以来の再会となるイアン・プラット氏から、「xen.org」についての説明があった。既に気づかれている方も多いと思うがOopen SourceのXenの開発リソースの多くは、XenSourceからxen.orgに移されている。
      XenSource社のCitrix社による買収に伴い、今後の開発体制に関するを説明がなされた。ベンダーからなる「Xen Advisory Board」を組織し、今後のXenのロードマップの作成や調整を行うという発表があった。その「Advisory Board」にてXenのロゴの使用条件を作成中であり、試案が公開された。特に今後の相互互換性確保のために「faithfull implementation」の認定を行うとしていた点が注目されるが、confomance test作成は難しそうに思える。

    • Keir Fraser: Roadmap and releases

      今後のロードマップとリリースサイクルに関してプレゼンテーションが行われた。年4回のメジャーリリース、月1回のマイナーリリースを目指すとしている。機能に関しては特に新しいものは無かったが、長らくロードマップにありながらも実装されていなかった「stub domain」に関するベンチマークが披露された。コードはまだ公開されていないが、実装が進んでいることが伺える。ベンチマーク結果は良好であるが、恐らくdom0内スケジューラのレイテンシーが削減されたためであろう。

  • Session 2: Xen Community: A Sampling of Status and Roadmaps
    • Sun Microsystems社のxVMのセッションが興味深かった。全体的にそうであるが、Sun Microsystems社がホストしていることもあり、同社のプレゼンテーションが多めであった。
  • Session 3: Add One-half Xen and Stir Briskly
    • チェアーのDan Magenheimer氏は以前hp labでXen/IA64の開発を行っていた筈だが、なんと、いつのまにか所属がOracleになっていた。こういった人の動きがある点がシリコンバレーならではなのであろう。このセッションは興味を引く話が多かった。仮想化の開発の中心がハイパーバイザーのコア部分から周辺領域に移ってきていることを反映しているように思える。特に目を引いたのは、「Gerd Hoffman: Introducing xenner」である。KVM上にXen domUインターフェースを再実装して、Xen domUをKVMで動かすという試みである。現在の実装はconcept proofであるが、実装を初めてから3ヶ月でコンソール、ブロックデバイス及びネットワークが動作しているという。
  • Xen/IA64 BOF
    • 一日目終了後Xen/IA64関係者で集まったが、残念ながら会場運営の関係で15分程度しか時間が取れなかった。現在作業の真っ最中である「kexec/kdump」のマージと「HVM domain save/restore」について話し合われた。これらについては粛々と開発が進められていくだろう。普段メーリングリスト上では発言はしていないが、評価を行っている人たちもいて、非常に有意義に意見を交換できた。

2日目

  • Session 1: CPUs updates、scheduling、mobile
    • Scott Rixner: Scheduling Pitfalls for I/O-intensive Guests

      仮想ネットワークデバイスとxen vcpuスケジューラの問題点についての発表であり、高負荷時においてイベントチャネルの優先度付けと処理方法に問題があることが述べられた。修正を行った結果、かなりの改善が見られ、非常に興味深い内容であった。

    • Sang-bum Suh: Secure Xen on ARM

      前回のサミットでも発表があったもののstatus update。諸事情の説明があったが、いまだにコードが公開されていない点について突っ込まれていた。

  • Session 2: Xen Networking
    • Jose Renato Santos: Netchannel2: Improving Xen Network Performance

      このセッションも前回のサミットでの発表の続きであり、地道な改善を続けているようである。

  • Session 3: Xen Memory and Storage
    やはりこのセッションでの注目すべきは「memory CoW」であろう。

    • – Grzegorz Milos: Memory CoW in Xen

      プレゼンテーションでは実装方法までが示されたのみで、性能評価はまだのようで、ベンチマーク結果は示されなかった。それほど改造量も多くなさそうなので、ベンチマーク結果が待たれる。

  • social event
    • これまでのサミットでは、どう言うわけか”ビリヤード大会”が行われていたが、今回は”geek quiz”が行われた。優勝者にはiPod shuffleをプレゼント。残念ながら健闘虚しく、iPodはゲットできず。

3日目

  • Session 1: Xen Deployment
    • Roman Marxer: Ganeti – a Xen based high availability cluster

      Google社の発表なので注目していたが、まだ実装が進んでいないようだった。

    • Brendan Cully: High-speed checkpointing for high availability

      ベンチマーク結果が示され、「興味深い結果である」とIan Pratt氏が絶賛。

  • Session 2: Xen Deployment
    • Donald Dugger: Updating Xen for the Client Environment

      Client Xenについての発表。

  • warp up
    • “geek quiz”とは別に、iPod shuffleのゲットのチャンスが訪れた。朝会場につくと、何故か紙に名前を書かされたのだが、それをもとにiPod shuffleを賭けた抽選会が行われたのである。結果は、ノーコメント。

 

以上が、私が興味を引かれたプレゼンテーションに関する報告である。プレゼンテーション資料はxen orgに公開予定なので、興味がある方はそちらも参照されたい。