概要

去る2月24日より2日間の日程で、「Xen Summit North America 2009」が開催された。今回はホストを務めたORACLEのカンファレンスセンターで開催され、定例どおりVA Linuxからも山幡が参加参した。不況の影響の為か(?)会場への参加者は60~70人程度と思われるが、リモートビデオでの発表参加等もあり、充実した2日間となった。

1日目

  • Ian Pratt:Project Update
    • 現在取り組まれているプロジェクトである、
    • Xen Embedded/Xen Client/Hosted(type-2) Xen/Xen Inttrospection API
    • について紹介があった。Hosted(type-2)Xenは初めて紹介されたもので、興味深いものである。Windows、OS-XやLinuxでのカーネルモジュールとしてXenを動作させるものである。Xen VMMイメージとそれぞれのOS固有のコード(1000行以下)からなる。WindowsやOS-Xでも動作するという点で実用上使い易くなり、またLinux上ではKVMとの競争という観点で重要である。
  • Keir Fraser:Roadmap & Release
    • リリースポリシーの変更が発表された。今後6~9ヶ月に一度のペースでメジャーリリースを行なう方針である。 3.3.2、3.4.0はイースター頃のリリースを予定している。また、次のリリースに含まれる機能についての次のような項目の紹介があった。「xenheapの変更」、「ページ共有」、「blktap2」、「ハイバーバイザー間の互換性」、「HA及びネットワーク性能の向上」等。
  • Diwaker Gupta:Difference Engine
    • OSDI ’08で発表された論文の発表である。ページ共有だけでなく差分の保存やデータの圧縮までやっているのが特徴である。最も興味を惹いた点はVMWare ESXとの比較である。単純なページ共有や差分による効果は少ないのに比較して、VMWare ESXは全く違った挙動を見せていた。
  • Jeremy Fitzhardinge:Xen in mainline Linux Status Update
    • pv_opsによるメインストリームへのマージ状況が紹介された。最近のトピックとしてgitリポジトリへの移行が大きい。これまではx86メンテナーを通じてx86ツリーへのコミットしていたものが、Jeremyが管理するリポシトリにコミットされ直接Linusツリーにpullされる事になる。また、pv_opsの呼出規約変更についての紹介もあった。これまでのC呼出規約では、register pressureが高くなる為性能低下を招いていたのを解決する為に、独自呼出規約が実装された。 pv_ops/ia64では独自呼出規約を実装せざるを得なかったので非常に興味深い。

 

  • Dan Magenheimer:transcendent memory on xen
    • 最近発表者がプッシュしているtranscendent memoryについて発表された。関心は効果的なメモリ使用である。多く行なわれているページ共有とは違ったアプローチである点で興味深い。OSは余分なメモリをページキャッシュに使う点が問題であるとし、transcendent memoryによりページキャッシュを拡張するアプローチを紹介していた。既にパッチも投稿されておりLinuxに対するhookもすくないものである。
  • Derek Murray:Satori:Enlightened Page-Sharing
    • メモリに関する発表の三つ目である。Satoriでは準仮想化によるページ共有を行なう。blktapを改造する事により同一ブロックからのデータを含むページを共有する。また、IBM CMMをx86に移植を行なった。
  • Noboru Iwamatsu:Paravirtualized USB Support
    • 日本人による発表である。Xen Summit Tokyoでの発表の続きであり、USBのdisconnectの処理が大変でパッチの投稿が遅れているそうである。あと一ヶ月程度で投稿したいとの事であった。isochronous転送(web camなど)のデバイスのサポートも難しくまだ出来ていないそうだ。
  • Jun Kamada:pvSCSI
  • Akio Takebe:PCI-Pass Through Techniques
    • 日本人による発表で、これもXen Summit Tokyoでの続きであり、pvSCSIとPCI pass throughについて発表をされた。今後とも頑張って欲しい所である。
  • Alan Kay:Status of SR-IOV &VT-D
    • SR-IOVとVT-Dについて論じた。今後のmult pci segmentやatsサポートは作業中であり、VT-d NUMAに関しては予定であるとの事であった。やはりiommu fault restartが議論になった。
  • Don Dugger:Power Management in Xen
    • Power managementについての紹介であった。最近は多種多様な作業が行なわれており、いろいろな結果が紹介された。

Evening Event

Computer History Meusiumを借り切って懇親会があった。残念ながら会場近辺しか出入り出来なかったが、cray-1を見れたことに、満足。

2日目

  • Andrew Warfield:Tralfamadore
    • Xen Summit Tokyoで発表されたものの続報である。ウェブインターフェースが強化されたりしている。
  • Patrick Colp:VM Snapshots
    • VMのメモリイメージスナップショット取得である。memory cowだけでなくdom0内の実装もいろいろと工夫されている印象を受けた。
  • Joel Becker & Tao Ma:REFLINK Operation in ocfs2
    • ocfs2の開発中の機能であるreflinkについて紹介された。ファイルシステムの機能でありXenとは直接の関係が薄い為、使用方法が簡単に示されただけで、実装と性能に関する話が全く無かった点が残念である。
  • Jose Renato Santos:Achieving 10GB/s Paravirtualized Drivers
    • ネットワークの性能改善の話である。過去数回の発表があり、早期のコードのマージを期待したい。

 

  • Jun Nakajima:Xen Scalability & Mission Critical Xen

    • RASとスケーラビリティーについて紹介された。特にstub domainに関して性能が劣化する問題が示されvcpu schedulerに手を入れる必要性があるとの議論になった。

レポートは以上となる。

次回の開催は6月となるが、開催予定地はベルリンであり、欧州での初開催となる。今までとはまた違った盛り上がりが期待できそうだ。