概要

6月23日から24日の2日間のスケジュールで「Xen Summit Boston 2008」が開催された。日本、欧州での今後の開催予定もあるため、サミットのタイトルに地名が入った訳である。VA Linuxからはすでに常連となった山幡とSimonが参加。今回は、山幡もサミットでの発表がありこれまで以上に充実した2日間となったようだ。なお、次回のXen Summitは11月21日、22日に、東京で開催されるということである。

1日目

  • Ian Pratt:Welcome & Project update
    • イアン・プラットより、プロジェクトステータスについての概観説明があった。「Xen Sdvisory Board」だけでなく「Xen Client Initiative」という組織が作られたようだ。ベンチマークとしてstub domainとshadow3(out-of-syncの追加)が示された。
    • Citrix社との関連もあるのだろうか?ロードマップに「client/desktop xen」も重視する方向性が打ち出されたいた。特にUSBや3Dのサポートが打ち出されていた点が印象的だった。
  • Keir Fraser:Roamap and releases
    • リリースサイクル及びロードマップについての解説。「client virtualization」に関する話題が新しく、USB及び3Dのサポートについて言及された。
    • 特に3D supportについてはGallium3Dなる新たなアプローチを試みているようだ。
  • Mike Day:Open Virtual Application Format
    • 「Open Virtual Application Format(OVF)」に関するプレゼンテーション。某ハードメーカーがEclips public licenseでコードをdonateするようだ。
  • Andress Lager-Cavilla:Could Computing Made Agile
    • HPC用途の「snowflock」と呼ぶライブラリの紹介があった。VMを明示的にforkして並列計算を行なうことが出来る。HPCでは有用と思われる。
  • Kartick Goplan:XenLoop
    • 「XenLoop」と呼ばれる高速inter-VM通信の為の拡張の紹介。dom0ルーティングをバイパスする。netfront/netbackへの拡張として実装されているが、まだzero-copyではない。
  • Prashanth Radhkrishnan:MMNet
    • これもinter-VM通信の高速化に関する発表。但し、発表者の所属がストレージメーカーである為にAppliance Server用途となっている点が違う。同じデータを複数のVMにzero-copyで渡していく、その為にisolationを弱めている。
  • Mukesh Rathor:Debuggin in Xen and Guests on Xen
    • 最近ツリーが公開された「gdbsx」と呼ばれるgdbstubとkdb for xenに関する発表。gdbsxはguest domainをdebugする為のものでkdb for xenはxen VMMをdebugする為のものである。x86専用であるが、すでに実装されているgdbstubよりもクリーンに実装されている。
  • Tim Wood:Modeling the overhead…Help with Capacity Planning
    • nativeの場合の負荷から仮想環境での負荷を推論する為のモデルを作成する。ベンチマークにより線形モデルを作成しるものだが、正確な結果が得られたことが示され、興味深い。
  • Yu Ke:Towards More Power Friendly Xen
    • 電力効率の為の提案を行なっていた。近年power managementはホットな話題だけに重要な話題だろう。
  • Thomas Friebel:Preventing Guests from Spining Around
    • ゲストのスピンロック取得を効率化する話題。特に最近のLinux kernelに取り込まれた「ticket spin lock」と仮想環境とは相性が悪くカーネルコンパイルでCPUサイクルの99%以上がスピンロック取得に無駄に使われ、10sの仕事に45分無駄にされていることになる。いくつかの提案と改善されたベンチマーク結果が示された。

2日目

  • Mark McLoughlin and Stephen Tweedie:Update on Fedora and paravirt_ops
    • 「Fedora」の状況と「paravirt_ops」についてのstatus update。開発を2.6.18ベースのものからparavirt_opsを採用した上流のツリーに移るべきだと力説していた。質疑応答でも同意する人がいて拍手まで起きていた。
  • Sang-bum Suh:update of Secur Xen on Arm
    • Xen/Armに関するstatus update。遂にソースが公開された。1年以上かかったので、素直に拍手を送りたい。コードベースが古いのでマージには時間がかかりそうである。興味がある人は大いはずなので開発にはずみがつくことを期待したい。
  • Etay Bogner:Client Virtualization – New Oppurtunities with Type 1
    • Windowsゲストに実マシンのリソースをpassthroughで渡し、ブラウザを別ドメインのwindowsないで動作させるという興味深いデモを行なった。画面表示等に関しては説明が無くおそらくNeoclesプロプラエタリなのだろう。
  • Tristan Gingold:Self IO Emulation: A Hybrid between PV and HVM
    • xen/ia64の「self io emulation」に関してのプレゼンテーション。ベンチマークも示された。発表者の自宅にia64マシンがあるそうである。驚愕。かなりうるさそうであるが、電気代はそれほどでもないそうだ。
  • Dan Magenheimer:Memory overcommit … Without the commitment
    • メモリオーバコミットに関するプレゼンテーション。現状Xen開発者はそれほど重視していないようであるが、必要とするユーザは多いと想像できる。
  • Samuel Thibault:Stub Domains
    • 現在開発が進行中の「Stub Domain」に関する話題。stub domainにはLinuxベースではなくmini OSベースのものを使用している。どういうわけかOCamlも動作させたいといっていたが、用途は示されなかった。
  • Caitlin Bestler:Virtual networking via Direct Assignment
    • SR-IOVを使用しての「device direct assignment」に関するプレゼンテーション。特にNICに関する話題であった。networkに関してはbondingを使用すれば異種NIC間でもlive migrationが行なえるとの提案を行なっていた。
  • Eddie Dong:
    • Support SR-IOV Devices in Xen and VT-d PCI passthrough Enhancements
    • Cache Attribute Virtualization in Xen.
    • Intel社からのプレゼンテーション。direct device assignmentに関して多くの話題。

今回のサミットでは、本レポートの筆者である山幡も「Paravirt Ops on Linux IA64」のプレゼンテーションを行いました。発表資料を掲載いたしますが、「Xen Summit Boston 2008 」の公式ページでも公開されています。

資料をPDFにまとめましたのでこちらからもお読みいただけます。
プレゼン資料『paravirt_ops/IA64』 (PDF:88 KB)
プレゼン資料『Paravirt Ops on Linux IA 64』概要 (PDF:49 KB)